*

*



直江のやつ、まだかよ……。

自分から呼んだくせに、なにやってんだ。


寒さに腕をさすりながら眉をしかめる。

イラついている理由は他にもあった。


ちらり、と数十メートル先にあるファミレスを見上げる。




「…はぁ」



梅野のバイト先じゃねぇか。
よりによって、なんでここで待てなんだよ。




「氷牙、おまたせ」

「…直江」

「ちゃんと来たんだ、えらいえらい」

「うるせ、場所移すぞ」

「あーだめ、それじゃ意味ねーの」




─は?と聞き返した時には、もう既に引力が加わっていた。

ずずずず、と引かれ、靴が摩擦で不快音を放つ。



「おい、どこいくんだ……っ、」



徐々に近づくファミレスに嫌な予感が募り、抵抗を試みるも、意外に直江の力が強い。

……こいつ、無駄に運動して鍛えられてんな。



「離せよ」



低音で見上げれば、今度はあっさり解放された。