「ねぇ、ゆい、…………今、誰のとこに行きたい?」
胸がぎゅうっと締め付けられた。
ちりちりと離れない熱がずっと消えずに、真ん中にある。
………ごめん、布瀬くん。
「…夜市くんの、とこに行きたい」
「………うん、そうだよね。俺は勘がいいからさ、ゆいが誰を好きかくらい、わかるよ」
…………いつから、だろう。
目を閉じた。
夜市くんとはあまり接点がなくて。
噂でしか、彼を知らなかった。
申し訳ないけどいい印象を抱いてはいなかった夜市くんとファミレスで遭遇して、そこからなにかと一緒にいる機会も増えて。最初はほんとにいろいろと理解できないとこも多かったけど…。
わたしが出した宿題を全部やり遂げたうえで不機嫌そうに見せてくる夜市くんが面白かった。
他の女の子といる時、どうしてかそっち側を視線で追いかけた。
一緒に撮った写真で、意外と笑ってくれていた夜市くんを見た時、嬉しかった。
キスされた時、強がって平気なふりをして、理由を聞けなかったのが歯がゆかった。
わたしの噂を気にも留めず、慣れない様子で元気づけようとしてくれた姿は優しかった。
抱き寄せられたベッドの上で、誰のものなのかわからないくらいの心臓の音は、うるさかった。
どうして夜市くんなのか、わからない。
どうしてこんなに気になるのかも、わからない。
でも、わからないからこそ、これが答えなんだと思う。