「おまえ、携帯貸せ」

「…なんでだよ」

「いーから」



荒々しい手のひらに急かされ携帯を乗せると、しばらくして直江の表情は更に翳りを増していく。

これ、と携帯画面を見せられた。




「未読メッセージめっちゃ溜まってるけど」

「あー、いいんだよ、いちいち反応すると面倒になる」

「そういうとこだろ」

「？……なにが」




意味を汲み取れない俺に、直江がガシガシと頭を掻く。




「氷牙はその気になれば連絡取れる女の子がたくさんいて、普通に手も出してんのに、ゆいちゃんが布瀬と仲良くするのは気に入らないって、虫がよすぎる」




顔に水をかけられたようだった。

肩まで浸かり込んでいたぬるま湯から俺を引っ張り上げるように直江が鋭い視線を向ける。




「おまえはなにも変わってないのに、相手の特別にはなれるって勘違いしてんじゃねーの？」




その通りだった。

………バカは、俺だ。