「やっと終わった」


午後7時。訳のわからない雑務からやっと解放され立ち上がると、布瀬が「帰ろっか」と梅野の鞄を抱えていた。



「梅野は俺と帰ればいいだろ」



咄嗟に意味不明な発言をしてしまった俺にふたりが振り向く。




「え、なんで?」

「……家が近いから」

「俺はゆいの家知ってるし、いつも送ってるから、俺がゆいと帰るよ」

「俺だって家知ってんだよ、なんならこの間泊まったしな」




これにはさすがの布瀬も初耳だったらしく、あまり動じなかった目が少し見開く。

その後ろでは「夜市くん…!」と梅野が焦ったような顔をしていた。




「あれは、やむおえない事情があったからで、ね?」

「あ? あー、あったかもな」

「あったよ、すごいあったじゃん」

「梅野、声でけえ、耳がいてえ」

「夜市くんが誤解を招くようなこと言うから…っ」




残念だったな、梅野。

唇をあたふたと開閉させる梅野を見ながら、もっと言ってやりたいと思う俺は、相当意地が悪いらしい。