「………うめの…?」
「………」
「寝たか?」
「………」
物音ひとつしない空間。
ちら、と横に目をやる。
………なんだよ、この状況で寝れんのかよ。
向けられた背中に苛ついて手を伸ばす。
その手で軽く梅野を引き寄せると、ごそごそっと小さな身体が暴れ出した。
「ちょ、夜市くんっ、」
「あ?」
「急に、なに、この手」
「あー、寒くて寝れねーんだよ」
だからってわたしクッションじゃないんだから、と俺の腕を引き離そうとする梅野。
「ちなみに、今強引に俺の身体動かしたら、痛くて悪化する」
「な……それって脅しじゃ」
「そ、脅してんの。んで、梅野は脅されてんの。わかったら、はい寝ろ」
「む、無理だよ、むり! おかしいって、絶対この大勢」
「うるせー」
「夜市くんっ」
すーすー寝息を立てて、強制的に会話を終わらせる。
俺の腕のなかでジタバタしていた梅野も、やがて諦めたように、くるんと丸まった。
そうして更けていった深い夜。
柄にもなく繋いでみたくてコツンと当ててみた手の甲に梅野が気づいてないといい。