なんなら両親は今も純愛夫婦で。
貧乏でも特別裕福でもなく、平凡にちゃんと育ててもらった。
誰のせいだとか、環境がどうとか、そんなんじゃなく、俺は元からこーいう淡白な人間だ。
「あれだな、立派に育ったクズってやつ」
そう言って、いつだったか、自分を客観的に嘲った俺を、なぜか直江は爆笑で迎えて。
「俺、おまえのそういう清々しいとこ、結構好きだわ」
俺を気に入る趣味の悪い直江を、本人には言わないが、俺も結構気に入っていたりする。
………梅野は、こんな俺をどう思うだろうか。
初めて芽生えた関心が向く相手。
自分のことしか頭になかった俺が、周りにどう思われようがどうでもよかった俺が、一変して今ここに在る。
驚いているのは俺自身で、そんな夜市氷牙は案外、嫌いじゃなかった。