「それ、俺も一緒に行く」
「えっ」
「…ケーキは俺も好物なんだ」
「そうなの!?」
「男ひとりで入るのは目立ちそうだからな、梅野がついてこい」
上からだなあ、と笑った梅野がいいよと頷く。
舞い降りた喜びを悟られないように唇を結んだ。
……よし、俺にしては頑張った方だぞ。
「───あ、クシッッ」
そんな矢先、鼻奥がくすぐられ、思わずくしゃみが出た。梅野がびっくりして振り返る。
「ほらあ、さっきから首元やけに開いてて寒さうだと思ったら……。もう、風邪ひくよ」
はいこれ、と。綺麗に巻かれていたマフラーを取って、梅野が俺に差し出してくる。
「いい、もう家近いし」
「いいから、ほら」
「………巻いてくれ」
「え?」
「指先が凍えてんだよ、巻けそうにない」
少し無理のある嘘だったかと思いつつ、つま先を梅野の方に寄らせてみる。
しょうがないなあと顔をあげた梅野が俺の首後ろに手を伸ばす。届かなそうにしている姿を見ていたい気もしたけど、さすがにちゃんと屈んでやった。
器用な指先に扱われるマフラーが隙間もなく首元を覆っていく。