再び凍てつく夜に身を投じる。
店内で充分に暖まったからか、直江を待っていた時よりは幾分かマシだった。
指先を擦り合わせながら透明なドアを押して出てきた梅野に一歩近づく。
「お疲れ」
「え、あ、うん、ありがとう。結構遅くまでいたね、夜市くん。びっくりしたんだよ、急に来るから」
「………直江が腹減ったっていうから」
「そうなんだ」
嘘だけど。
こういう時、世の男たちは、会いたかったら来たと胸の内をそのまま言えるんだろうか。
一瞬だけ描いてみた素直な夜市氷牙は、眉間に皺が寄るほどくすぐったく、やっぱり無理だとそそくさ歩き出す。それに少し遅れて梅野も並んだ。
だいたい、こいつはなに考えてんだ。
言動は普通にわかりやすい方だと思うものの、恋愛となると話はべつで、まるっきり脳が働かない。
よくよく遡れば、少し前には荒れた衝動でキスまでしてしまったわけで。
……おいおい待て。
つーか、あれどうなった?
梅野の噂騒ぎに気を取られてすっかり置いてけぼりだったけど、普通にやばいことをした、んだよな?