「で、デートって…」

「なに慌ててんだよ」

「うるせーな」



そもそも、身体目的以外で女と出かけたことなんてない。そんなクズ行動ばかりしていた俺が梅野とはそういう関係になりたいわけじゃないと思うから、やっぱりあいつは特別なんだと実感する。


どこ行けばいいんだよ、全然わかんねー。
そもそも、誘うのもなんて言えばいいんだ。


正答も誤答もわからず、脳内でいくつもの言葉が渦巻いては消える。




「ご注文どうぞ」


膝を見ていた視線をあげると、女店員が微笑んでいた。


……なんだ、梅野じゃねぇのかよ。


身勝手な不満を顔に反映することなく対応すれば、そそそそ…と紙のようなものをテーブルに置かれて。



「これ、良かったら。わたしの連絡先です。お兄さん、かっこいいですね」



期待に満ちる目線を受けながら眉を顰めると、見ていた直江が即座に反応した。



「あ、こいつ、今、初恋中なんで」


紙を当人側に戻しつつ、にこっと笑いかける直江に嫌そうな視線を突き刺す女。

結局すんなり引き下がりはしたものの、ちらちらと笑顔を飛ばしてくる様子に呆れて首を振った。