「なあ、」

「ん?」

「俺さ、できたんだけど」

「できた? なにが?」

「好きな人」



スローモーションを見ているように直江の目がどんどん開いていく。やがて限界に達したのか、ぱちりと瞬いた直江が「は?」と声を漏らした。



「おまえ、それここで言う?」

「どこで言ってもいいだろ」

「なんの脈絡もなくふつーに言うからビビったわ」



一旦お水、と言って口に含んだ直江が息を潜めて俺を見上げる。



「で、感想は?」

「……初めてで、よくわからん」

「んだよ、もうー。打ち明けた面白み……意味がないだろー」

「いま、面白みって言ったか? おまえ、楽しんでんだろ」

「ははは、気のせい気のせい」



なんで俺にはこんなやつしか相談相手がいねーんだ。

くくく、と明らかに笑っている直江を咎めるように視線を投げる。



「ごめんて。それで、どうすればいいかって話でしょ?」



うーん、と額に手のひらをあてがった直江から容易く出てきた「デートは?」という一言に、危うく水を吹き出しかけた。