ファミレス前の小さな街路樹。
その横で、じっと立っているのは俺くらいなものだろう。
昨日の夜中には初雪が降ったらしい。
コートの織りめからここぞとばかりに忍び込んでくる冷気に首をすくめて辛抱しながら前を見据える。
「おまたせ、氷牙………うわ、さむそ」
「遅い…」
やっと現れた直江に、もはや声を荒げるのもくたびれた身体で急いで店内に入った。
「いらっしゃいませ……え、」
「やっほー」
「よう、梅野」
ドリンクバーの前辺りを彷徨いていた梅野が俺たちに気づき、驚いた顔をする。けれどすぐに接客態度を取り、「空いているお席へどうぞ」と促された。
適当な場所に腰を下ろして足を揃える。
さっきまで鈍っていた爪先の感覚が舞い戻り色を灯した。
「なににする?」
「ポテト」
「だけ?」
「あんま腹減ってない」
「じゃあなんで来たんだよ」
メニュー表を開き、しっかり吟味している直江を尻目に、ぼんやりと向こうを見つめる。
忙しそうな梅野は奥の方で外国人らしき男にジェスチャーを交えながらあたふたと言葉を繋げていた。