「あ、氷牙」
「先輩」
「久しぶりー」
「だな」
そういえば、しばらく連絡をとっていなかった愛先輩がふあと欠伸をもらす。
その影響で瞑った右目とは反対の左目がこっちを向いて、なぜかニヤニヤされた。
「聞いたよー、女の子庇ったんだって?」
「…あー、まぁ」
そんなに大袈裟なものでもないけど、間違ってはいないから一応頷く。
「珍しいじゃん、面倒くさがりな氷牙がそんな行動とるなんて」
「それ、めっちゃ言われたわ」
「でしょーね、どんな子? 美人?」
「………美人というよりは、かわいい」
「ひゃー!」
「…なんだよ」
急に耳をつんざくような声をあげる先輩を睨む。
「ついに来たのね、氷牙にも」
「は?」
「恋が!」
………超能力者か。
なんで今の会話でわかったんだ。
なにがそんなにおかしいのか、がはがは笑っている先輩。その下では握られていた携帯が鳴って、画面を見た先輩がふーと一息つく。
「じゃ、あたしとは終わりだな。その子、大事にしなよ。一途じゃないと振られちゃうぞー」
最後に余計な一言を加えるのも先輩らしいと思いながら、はいはいと笑って返事をした。