「梅野、交代だ」

「えっ、夜市くんできるの?」

「おまえよりはな」



残り少ない小銭を入れる。

何度かやったこともあってコツを掴んでいる手が慣れたように動く。

けれど一度目は失敗。

頼むから取れてくれ。
次こそはと集中して力をこめる。



手応えは、あった。


「がんばれ」


クレーンがうさぎを捕らえた瞬間、梅野の目が輝く。

そのまま危うげに揺さぶられながらも、ちゃんと最後まで持ちこたえた獲物が落下した。



「ほら」

「夜市くん、すごい」


小さな指先がうさぎのぬいぐるみを抱える。


さっきよりは顔色がマシになったな、と思いながら、嬉しそうに笑う梅野に自然と自分の表情も緩んでいった。