「気持ち悪いってね、散々言われたの。既婚者をそういう目で見るとかありえない、普通に引く、最低、とか。……わかってたよ、わたしも最初、なんでってなった。先生には奥さんがいる。結婚してる。でも、狙ってるとかそんなのじゃなくて、ただ、気づいたら、好きになってたの。…………だからなにも言えない。気持ち悪いって、誰よりも一番わかってて、その通りだって思うから」



梅野がなにを抱えているのか知りたいと思いながら、他人のことを苦しそうに話す梅野を見ていたくないだなんて、俺は相当わがままだ。



「でもね、わたしにも味方はいたよ。布瀬くん、布瀬くんだけはわたしをずっと信じてくれた。家から近かった高校は中学の人も半分くらい進級してくるから、県外のここに来たの。ちょうど布瀬くんもこの高校の近くに引っ越すって聞いて、ひとりじゃないのが嬉しかった」



だから布瀬とだけ中学が一緒なのか。

そういえば、直江にその頃の話を聞かれた時、避けるように不機嫌になっていたのを思い出す。



「……ところで今日は、その肝心の布瀬はどうした」



あいつなら真っ先に駆けつけてもおかしくないのに。