「先生が既婚者だっていうのはもちろん知ってたんだけど、どうしてか好きになっちゃって。でも当然なにもしなかったし、どうこうする気なんて全くなかった」


懐かしむように話す梅野に静かに耳を傾ける。


「3年生に上がった時にね、勘のいいクラスメイトに気持ちがばれてしまって。あまり仲良くはなかったんだけど、ある日、その子から助けてってメールが来たの。ホテルの前で連れ込まれそうって。びっくりして駆けつけたら、なぜか先生がいて、先生もそのクラスメイトに同じメールを送られてた」


わたしバカだったんだよね、と梅野が笑う。


「翌朝学校に行ったら、ホテルの前で先生と一緒に写ってる写真がクラス中に出回ってて。学校は大騒ぎになって、わたしも先生も事実を話したし、そのクラスメイトにも詰め寄ったけど、最後まで認めてくれなかった。みんな真相とかどうでもよくて、膨れ上がっていく噂に対処しきれなくなった学校を見て、先生は退職した」



わたしのせいでもあるんだと思う、と梅野が俺を見る。


……こんな時、どう声をかければいいんだろう。

俺には、わからない。