持ったのは、控えめそうな奥の女。

両手で支えたその皿を、どうぞと、俺に渡してくる。

同時に刻まれた微笑みで、隣を陣取っていた男の顔がみるみる曇っていく。



…めんどくせえ。

女からの好意だけでなく、男の嫉妬までうまく対応しなきゃならない合コンなんてものは、俺には合わない。

いっぱい食べてねと、わざわざ耳元で囁いてきやがった右側の女には、心のなかで舌打ちをしながらポテトをつまんだ。





しばらくして、歌っていた女が声をあげた。


「そろそろ、席替えしない?」

「それ賛成! はい、あたし、氷牙くんと喋ってみたい!」

「わたしも!」


ぞろぞろと挙げられていく手にさすがに嫌気が差してきたのか、直江以外の男たちが不満そうに肩を落とす。



「なんだよ、結局あいつの一人勝ちかよ」

「俺ら、いる意味ある?」


「まあまあ、氷牙は友達じゃん。あんま悪く言うなって」

「友達って……おまえのだろ。俺らはべつに、そんな話したことないし」