直江はお得意の盛り上げ役に徹していて、ほかの男は、さっきから俺をチラチラと見てくる女たちを取られないように必死で話しかけている。
大音量の歌や、それを上回るうるさい声が響くこの部屋は、意外と余計なことを考えなくて済むかもしれない。
「ねーえ、なんか暗くない? わたしが話聞こうか?」
ひっつく腕。それはおまけで本体はこっちだというように胸が押し当てられる。
瞳だけを動かして無表情で見下ろせば、なにを勘違いしたのか、うっとりした表情で、さらに体が合わせられ。
飽きるほどやられてきたそのアピールに、顔が整いすぎてるのも良くないな、と、贅沢な悩みを浮かべる。
「離してくんない?」
「え、」
「ポテト、食えない」
「…あ、なんだー、お腹空いてたんだ」
とりあえず朝からなにも食べていないお腹を満たそうとテーブルに手を伸ばす。
取ろうとしていたポテトの皿は触れる直前で奪われた。