「えっと、あちらは……?」


「あ……同じクラスの夜市くんで、ここまで送ってくれて」



俺に気づいて首をかしげた布瀬の母親に、梅野が大まかな説明をする。

早とちりなものですみませんと、頭を下げられ、いえ、と、俺も一応礼儀正しく返しておいた。




「布瀬くん、テスト勉強かなり詰め込んでたから倒れたんだよ」

「はは、そうかな」

「もう、ほどほどにしないと」

「そうだね、気をつける」



膨れる梅野の頭をなだめるように撫でる布瀬。

こういう光景はもう何度も見てきた。



おそらく鈍感梅野は、布瀬の気持ちにすら気づいてない。

そんなに大事なら早くアクションを起こせばいいと、想いのこもった布瀬の目を見ながら思う。




「俺はもう帰りますね、お大事に」



このまま長居する気分にもならず、紳士的な笑顔を浮かべて、その場を離れた。