「ゆいちゃん…!」


駆け寄った梅野に、ひとりの小柄な女性が立ち上がる。

容姿と状況からして、おそらく布瀬の母親だ。


その近くのベッドで横たわっていた布瀬は、なぜか気まずそうな顔をしていた。




「なんで呼んだの、母さん」

「だって、急に倒れるからびっくりして」

「だからって………ほら、ゆいが驚いてるよ」



倒れたわりには元気そうだなと思ったけど、よく見れば、顔色はたしかに悪い。

梅野がいろんな角度から布瀬をまじまじと見つめる。



「…大丈夫、なの?」

「うん、貧血だって」

「そっか………はぁ」

「ごめんね、母さんが大袈裟にメールしたりして」

「ううん、無事でよかった」



ありがとうと笑った布瀬が、目を伏せて胸を撫で下ろした梅野の後ろにいる俺に視線を移す。


なんでいるんだとでも思ってるんだろう。

俺だって、なんで来たんだと自分で思うくらいだ。