「梅野?」

「ごめん、ちょっとメールきた」


画面に照らされた梅野の表情が徐々に険しくなっていく。

不安定に泳ぐ視線に近づくと、梅野が、行かなきゃ、と小さく発した。



「梅野」


そのまま駆け出そうとする足を止める。



「どうした、なにが…」

「布瀬くんが、倒れたって……」

「布瀬が?」

「うん、病院行かないと」



心配そうに俯く頭。

ここからだと距離のあるバス停に行くと言い出す梅野に首を振った。



「遠すぎる」

「じゃあ、どうすれば」

「タクシー呼んだ方がはやい。所持金は?」

「…500円とちょっとくらい」



…はぁ、貧乏梅野め。

ため息をついて腕を引く。



「行くぞ」

「え、」

「払ってやるから、行くぞ」

「う、うん」



狭い道をとりあえず抜けながら電話をかける。

3本目の電話で、10分ほどで近くの通りまで来てくれるタクシーがあった。


道中、ただひたすらに布瀬のことを考える梅野は俺なんて少しも映してはなくて、それなのにわけもなくその瞳をぼうっと見ていた。