姫とは周りを癒し、周りに守られるべき存在。

そんなの絶対に願い下げだ。


だって私は・・・────。



「私は豹牙さんに守られたいんじゃなくて、一番近くで支えたいんです」



豹牙さんが目を見開いた。



「ですから姫には絶対になりたくありません」



でも、と続ける。



「貴方に心の拠り所が必要ならば、私を頼ってくださってもいいですよ」



以前の私ならきっと姫になりたくないで会話を終わらせていただろう。

でも豹牙さんの脆い部分を思い出した今、改めて貴方を支えたいと思った。



「・・・・・・本気か」



豹牙さんはまだ戸惑っている。その瞳に期待が見え隠れしているのに気づくと、小さな笑みがこぼれた。



「はい。私にとって貴方はこの世で一番大切な人ですから」



この気持ちは絶対に一生変わらない。

いや、変えようと思っても変えられないだろう。

そう断言出来るほど、私は貴方を慕っているのだ。


私の気持ちを受け止めた豹牙さんは、私の後頭部に手を伸ばした。



「そうか。なら──」



腰をぐいっと寄せられ、2人の影が交わった。



「遠慮はしないからな」



そう告げられたのは、唇が重なった後だった。