豹牙さんの発する音を一音でも聞き逃したくなくて、心臓あたりに耳を当てる。



「今でも私に姫になって欲しいって思ってますか」

「・・・・・・でもお前は嫌なんだろ」



この間は肯定、ですか。


──猫。何事も後悔しないように、ですよ。


そうですね。あなたの言う通りです。


ふと空を見上げると、既に日は沈んでおり、茜色が黒色に塗り代わる途中だった。

その中には煌々と輝く一番星がいた。





「豹牙さん」


駐輪場に着いた時にはすっかり日が暮れていた。辺りに人の気配はない。

屋外灯だけが私たちを照らす中、豹牙さんを呼び止めた。



「改めて考えてみたんですけど、やっぱり私は姫にはなりたくありません」



一歩踏み出し、豹牙さんを仰ぐ。