思わぬ光景を前に、一瞬思考が止まった。
今まで遥か遠くだけを真っ直ぐ見据えていた豹牙さんの瞳がゆらゆらと揺れている。
ああ、そうか。
豹牙さんだって人なんだ。
抗争の前日ともなれば不安にもなる。
なんせ豹牙さんは暴走族の総長。
明日の勝敗がどうなろうと全責任を負うことになるのだから。
私のようなただの幹部とは背負うものの重さが違いすぎる。
でもそんな豹牙さんを支えるために私はここにいるんだ。
「──多少環境は変わると思います。でもそれだけです。私たちが一緒にいることに変わりはありません」
語気を強めると豹牙さんが私を視界に捉えた。
その瞳に映る不安を取り除くために、一寸の曇もなく見つめ返す。
「私はどんな豹牙さんにだってついていきますよ」