「実はここのところヤツらの動きが怪しくてね」
"ヤツら"とは去年葬り去られた【堕天】の後ろ盾のことだ。
「・・・ヤツらなら既に壊滅したのでは?」
「そのはずなんですけどね。どうも若曰く違和感があるらしいんです」
「なるほど・・・」
彼らの若頭と面識はないが、話を聞いたり情報を集めたりした限り、かなり有能だ。
それを豹牙さんも認めた上で声を掛けたわけですし。
「まぁ今日のところはもう帰っていいです。どうせ外で豹を待たせてるんでしょう?」
「はい。では失礼します」
なんで豹牙さんもいるって知ってるんですか、とは突っ込まずに一礼して踵を返した。多分監視カメラで見ていたのだろう。
扉に手をかけたところで、後ろから彼の声が聞こえた。
「猫。何事も後悔しないように、ですよ」
「言われなくとも」
そう端的に返し、振り返ることなく退室した。