私たちは互いの本名も実態も何も共有していないため、コードネームのようなもので呼び合っている。
だが豹牙さんのことを『豹』と呼ぶあたりこっちの素性は調査済みだろうし、私たちだって彼らの素性を知っているから、ただの暗黙の了解に過ぎない。
それでも万が一のときにすぐに関係を切れるように体面を保っている。
ゆったりと脚を組み直した彼は首を傾げながら私に尋ねた。
「最近の学園はどうです?」
「"姫が【堕天】の人間に襲われてるところを総長が助ける"という出来事が6月に3度起きました」
端的に伝えると彼の眉毛がピクっと反応した。
やはり豹牙さんがほとんど学校に行かないのも把握済みらしい。
「・・・それで?」
「こちらで調査に当たっていますが、有益な情報は掴めておりません」
「そうですか・・・。分かりました。僕らの方でも調べてみましょう」
「何か気になる点でも?」
嫌な予感がする。
だって普段なら彼らは私たちがすることに干渉してこない。