そして周りの雰囲気も変わった。
健気に頑張るあやなに感化されたのか、構成員の間であやなの恋を応援する流れができている。
自分が相手にされないから嫌だと医療班の女子を突っぱね、
姫を欲した構成員たちが、だ。
当然この流れをよく思わない人も一定数いるが、それは浬が何とかなだめている。
まだ【黎明】に入って半年も経たない姫の恋がこれほど影響力を及ぼすとは思ってもみなかった。
正直、鳥肌が立つ。
それに歪な偶然が重なりすぎていることにも嫌な予感がする。
私の知らない内に何か大きな動きがあるんじゃないか、と。
だからそれらの懸念を振り払うために、私の補佐に指示を出した。
【黎明】が暴走族であると実感するのはバイクに乗っているときや喧嘩しているとき、それと───。
「冴妃」
「はい」
帰路で豹牙さんに呼び止められ、振り返った。