あなたが連れてきたんじゃないのか、と目で訴えても「ん、俺?」と笑ってかわされる。
この反応を見る限り、全員現地集合だったのだろう。
「裕次郎さんしかいないでしょう」
免許をとってから1年が経ってるのは豹牙さんと裕次郎さんしかいませんし、その豹牙さんは私を乗せるつもりですし。
「えー無理無理。予備のヘルメット、家に置きっぱだし。それとも──事故死覚悟で乗る?」
「だっ、ただ大丈夫です・・・!わたしっ、タクシーで帰ります!」
裕次郎さんが目を細めて薄い笑みを浮かべると、あやなはすっかり萎縮してしまった。
ただでさえ糸目で細い目をさらに細めてどうするんですか。
はぁ・・・と溜息をこぼし、豹牙さんの方を向いた。
「でしたら私もタクシーで帰ります」
バイクに軽く腰をかけている豹牙さんにヘルメットを返すと、眉をひそめられた。
「俺が事故るって言いたいのか」
「まさか。この時間に一人は不安でしょうから付き添うだけです」
しかもあやなは【黎明】の姫だ。
何かあったら私たちのメンツが立たない。