夏が近づいてきているとはいえ、梅雨前の6月の夜はまだどこか冷たさを残している。
後ろを振り返るとテールランプが流れ星のような線を描いていた。
何故、豹牙さんたちが時々バイクで出掛けるのが分かった気がする。
風が心を洗ってくれるようで気持ちいいからだ。
あと単純にスピードが速いとスカッとする。
そう感じる時点で思考までもがだいぶこちら側に染まっていることに気づき、クスリと笑みがこぼれた。
以前の私だったらスピード違反だとか道路交通法だとか、そんなことばかり気にしていたはず。
また、乗せてくださるでしょうか。
そうなったらいいな、と思いながら腕の力を強めた。
「豹牙さん!冴妃さん!」
────え、あやな?