「体調が悪いので早退しようとしただけです。どうかお気になさらず」

「そんな奴が走れるわけないしそもそも今は放課後だ」


その通り過ぎて何も言い返せない。


「もういいですから、離してください。そして・・・早くあやなのところに戻ってください」


いくら先生に勉強を教えてもらったからといって、首席になるのは簡単じゃない。

きっとあやなも豹牙さんに褒められたくて頑張ったはず。


その気持ちは痛いほど分かるから、私の焦燥感なんて無視して送り返さないと、あやなが報われない───。


そんな私の思いとは裏腹に、豹牙さんは腕の力を緩めようとしなかった。


「どこで誰といるかは俺が決める」

「っ!」


つまり豹牙さんはここで私といると決めたのか。


さっきとは違う意味で心臓がはねた。

これは安堵感か、はたまた優越感か。