他の人にとってはちっぽけなこと。


でも、私にとってはとても大事なことだったから。


苦しい。



「─────き、冴妃」



名前を呼ばれたと思ったらいきなり腰に腕を回された。



「っう、わぁ」



バランスを崩し、そのまま後ろに倒れ込む。



「やっと捕まえた」



ガチっとした胸板とともに上から聞こえたのは低く澄んだ声。



「豹牙さん!?なんで、」

「お前が急に走り出すからだろ」



ひとまず腕から逃れようとしたが、より強く拘束されてしまった。

仕方ないので豹牙さんを見上げながら会話を続ける。