「あっ豹牙さん・・・!」



その御名前を聞いただけで、さっきよりも重苦しく心臓がはねた。

あやなが軽い足取りで豹牙さんの元に近寄ると、豹牙さんの後ろから浬がひょこっと顔を出した。いつものようにカラッと笑っている。



「いやいや俺の存在忘れてねー?」

「あっすみません、浬さん!」

「いーよいーよ慣れてる」



【黎明】の総長と幹部と姫が戯れている、とても平和な空間。

あの場所だけが神に祝福されるかのように光り輝いて見える。

まるであやなは総長や幹部から愛されるヒロインだ。


ただひたすらに喧嘩し、やっとの思いで地位を得た私とは違う、ある日突然現れた可愛い可愛いお姫様・・・・・・。


そんな自覚のないあやなは遠慮がちに豹牙さんを見上げた。



「あ、あの、豹牙さん。わたし頑張って数学のテストで一番取れました・・・!ですから、その・・・・・・もっと、わたしを頼って欲しい・・・です」



か弱い声で健気に想いを紡ぐあやなは庇護欲をそそる。