問題なのは─────
「おかえり。やーっと帰ってきた」
賢い人と書いて「賢人」という、この男だ。
良くて中の上、悪いと中の下。
どうやっても中の枠から上に抜け出せないのは少し気の毒に思う。
「どうされました?」
「数学教えてくんね?今回中学の範囲も入っててふつーにヤバい」
やばいことを自覚してるならリビングでスマホいじりながら私の帰宅を待ってないでさっさと教科書でも読んでればいいのに・・・。
あー、いや読んでも分からないから頼ってきたのか。
仕方ありません。ここは私が一肌脱ぎましょう。
テストの3日前に頼ってくる時点で手遅れな気もしなくもなくもないですが・・・。
「いいですよ。赤点をとらせるわけにはいきませんし」
「まじ?さんきゅ」
ため息混じりにオーケーを出すと賢人は嬉しそうにニカッと笑った。