わざと地味な格好をしていたのにも納得がいく。


それらの情報を資料にまとめて豹牙さんに提出したが一瞥するだけで記憶に留めたかは謎だ。


回想していた私は豹牙さんがお椀を机に置いた音で現実に引き戻された。



「お前、ちゃんと勉強出来てんの?」



言外に料理作ってて勉強に支障はないのかと訊かれた。

これは豹牙さんなりの心配の仕方だ。



「はい、抜かりなく」

「そうか。ならいい」



淀みなく答えると、豹牙さんは再びお吸い物を啜った。


心配するわりにあっさり引くのはそれだけ私の言葉を信頼している証拠。

私の両親だったら絶対にこうはいかない。


──冴妃ちゃん一人で大丈夫?ママが問題だそうか?
──大丈夫なわけがないでしょう。ほら教科書見せて。
──冴妃ちゃんは私がいないとダメね。