「大丈夫か」
ベッドから降りて私のところに来ようとする豹牙さんを手で制し、もう片方の手で水を飲む。
「・・・あれ本気だったんですか。熱にやられて思考がおかしくなったと思ってました」
「ふざけてんのか」
「まさか」
呼吸を整え、水をもう一口飲んだところでようやく豹牙さんと向き合った。
「姫ならあやながいるでしょう?」
「・・・・・・」
「豹牙さんが昨日連れてきた人です」
「あー・・・」
そういえばそんな奴もいたなと言わんばかりに鈍い反応をされた。
豹牙さんは必要なことは一度言ったらすぐに覚えるが、興味ないことはとことん記憶しない。
だから【黎明】の構成員たちの名前なんてまず覚えない。