豹牙さんの寝顔を見るのはこれが初めてだ。

カーテンからもれる夕日に照らされ、束感のある長いまつ毛が影を作っている。

ただ寝ているだけなのに妙に色っぽいのは熱のせいで顔が赤いからだろうか。

何も悪いことはしていなくともやましい気持ちになってしまう。


ひとまず飲み物とゼリーを冷蔵庫に入れようと動いたせいでビニール袋がガサッと音を立ててしまい、豹牙さんの目がゆっくりと開かれた。


どこか焦点が定まっていない。
それほど熱に苛まれているのだろう。



「・・・・・・冴妃か?」

「はい。裕次郎さんの代わりに看病に来──!?」



来ました、と言い切る前に豹牙さんに腕を引かれ、ベッドに倒れ込む形になった。

ドンッとペットボトルが床に落ちた音が遅れて聞こえた。


それから強制的に布団の中に引き込まれる。