裕次郎さんは本人曰く用事があるし浬はどうせ年上のお姉さんとデートだろうし賢人は巡回当番なのでしばらく帰ってこないだろう。


私たちが生活する最上階は吹き抜けになっていて1階がリビング、2階が個室だ。

個室はキッチンもトイレもお風呂もある1Kの部屋だから、一人暮らしと共同生活を足して2で割ったような不思議な距離感を保っている。


ダイニングキッチンと、でかいソファーとテレビが置かれたリビングを素通りし、2階の最奥にある豹牙さんの部屋の前に立った。



「豹牙さーん・・・?起きてます?」



控えめにノックをして声をかけても返事がないので、音を立てないようにドアノブに手をかけた。内鍵はかかっておらずすんなりと中に入れた。


瞬間、洗練されたハーバルノートの匂いが肺を満たす。


私の大好きな豹牙さんの匂いだ。


私室にお邪魔するのは初めてだが部屋の間取りは全く同じだったので、豹牙さんを起こさないように慎重にベッドまで足を運んだ。