私は昔から人と距離を詰めるのが下手だ。

小学校低学年のとき、他の子の見よう見まねで、当時の友達に抱きついてみたら「え、冴妃ちゃんそういうキャラじゃなくない?」と引かれ、両親にイタズラをしてみたら「頭おかしいのか」と怒られたことがある。


それでも豹牙さんにならこんな風に甘えても大丈夫だと思ったんですが、その考えこそ私の"甘え"だったんでしょうか。

俯く私に向かって、豹牙さんが言う。


「別に俺の部屋でする分にはいいが他所ですんなよ」

「はい・・・」

「特に他の男の前な。危ないから」


─────えっ?


咎めるような言い方に一瞬気分が沈んだが、二言目に驚き、思わず顔を上げてしまった。

そして豹牙さんの表情を見てさらに驚く。
何故なら豹牙さんはムスッとしているが、その瞳には不快感や嫌悪感なんて微塵もなかったからだ。