賢人さんは尚も続ける。


「そうは言っても俺はお前が本当に豹牙さんが好きか逆に疑問だったけどな」

「す、好きですよ・・・!」

「豹牙さんのこと何も知らないくせに?」

「え、しっ、知ってますよ!そりゃ賢人さんには敵わないでしょうけど、でも、知ってます」


「知らない」と言われて一瞬ドキりとしたけれど、わたしはわたしなりに豹牙さんのことを知っているつもりだ。

だって、豹牙さんのことが好きだから。

賢人さんはわたしを試すように首を傾ける。


「例えば?」

「えと、暴走族【黎明】の総長さんってことと、日比谷グループの社長の息子さんだということと、あと、学園にほとんど来ないってこと、です!」

「表面的なところばっかだな」


賢人さんは呆れたように笑った。


「だから無謀にも豹牙さんを振り向かせられるとか思ってたんだろうな。豹牙さんは冴妃以外見てないのに」


冴妃さん以外見ていない。
その言葉が心にずしりとのしかかった。