期待したような瞳から豹牙さんも私と同じ気持ちだと伝わってきた。


「まだ、ダメです。もう少し待ってください」


豹牙さんと違って、私はたった今気持ちを自覚したばかりだ。

まだ付き合うとか、付き合ったらどうなるかとかそんなことを考える余裕がない。

恋にうつつを抜かしてダメになる人間は星の数ほどいる。私がそうだと確定したわけではないが、逆に違うと断言もできない。

私は豹牙さんのことが好きで誰よりも近くにいたいけれど、それと同じぐらい幹部として貴方を支えたいから。

だから、もう少しだけ自分の気持ちを見つめる時間が欲しい。

全ては貴方と共に歩んで行くために。


「その代わり──」


言葉を切り、豹牙さんの首に手を回す。


「・・・これで」


ちゅ、と軽く触れるだけのキスを落とした。