色々と突っ込みたかったがそれらは呑み込んで、当たり障りのない疑問を口にした。


「本当は行きたくなかったが、昼の騒動を思い出して釘を刺しにな。お前が代わりに行って警告するよりそっちの方がダメージがでかいだろ」


豹牙さんはなんてことないように言い切った。

嘘は言っていない。
でも大事なことが抜けてませんか。


「では、キス・・・したのは?」

「は?何の話だ」


豹牙さんは苦虫を噛み潰したような嫌な顔をした。


「あぁ、もしかして胸ぐら掴んだときのあれか?」

「胸ぐら・・・!?え、あやなに一体何を言われたらそんなことになるんですか?」

「お前の行動を止めろ」

「うわぁ・・・」


悪手すぎる。

幹部である私すら止められないあやなのお願いを、何で総長である豹牙さんが聞いてくれると思ったんだろう。

『胸ぐら』という思わぬ単語が飛んできたせいか、昨日から抱えていたモヤモヤも一緒に吹き飛んだ。