でも嘘はついてないから、本当に賢人に怒られたらしい。

驚きのあまり、つい身を起こして振り向いてしまった。

豹牙さんが体調の悪い私を労わるように手を伸ばしてきたが、気づいたときには反射で叩き落としていた。


「あっ」

「は?」


豹牙さんは懐いていた猫に引っ掻かれた飼い主のように驚愕し、残念そうに叩かれた手を見た。


「・・・・・・反抗期か?」

「違います」


反抗期ではないが、今豹牙さんに触れられるのは嫌だった。

豹牙さんは気を取り直すように持ってきた炭酸水の入った缶を差し出した。


「まぁいいか。とりあえずこれ飲め」

「・・・ありがとうございます」


缶を受け取りタブを引くと、カシュッと空気が通り抜けた。

一口飲むと炭酸のシュワシュワが喉を刺激した。

そういえば昨日から喉が渇いてたんだ。他のことに気を取られて完全に忘れていた。

喉が潤ったからか、同時に心にもほんの少しだけ余裕が生まれた。