「冴妃、起きてるか」


案の定、ノックしたのは豹牙さんだった。

正直今の私は豹牙さんと向き合える精神状態ではないが、ここで避けたところで解決するものでもない。

ややあって「はい」と返事する。


「入るぞ」

「・・・・・・どうぞ」


せめてもの抵抗で寝転んだまま背中を向けたが、豹牙さんが何も突っ込んでこなかった。

聞こえたのはベッドサイドに座った音だけ。


「調子が優れないのでこのままで失礼します」


そう断りを入れると豹牙さんは「そうか」と応えローテーブルに何かを置いた。

ややあって豹牙さんが言う。


「昨日賢人に怒られた」

「───はい!?」

「冴妃に何したんすかって殺気漂わせながら」


賢人が怒った?豹牙さんに?それだけでも想像つかないのに殺気まで・・・?


「やっと俺を見たな」


豹牙さんはイタズラが成功したような口振りでそう言った。