本当に嫌になる。
たったあれしきのことでこんなにダメージを受けている私が。
豹牙さんが誰にキスしようと豹牙さんの自由だ。
私にどうこう言う権利はない。
頭ではそう理解しているのに、心はナイフを刺されたかのように鈍く痛む。
何故豹牙さんはあやなにキスしたのだろう。
今まで名前すら呼んだことがなかったのに。どうして急に・・・。
何か急激に惹かれるものでもあったのだろうか。
思わずキスしたくなるほど強い何か。
豹牙さんとあやなにあって、私にないもの。
・・・・・・あぁ、ひとつだけある。
カリスマ性。
小さい頃から周りの注目を良くも悪くも集め、数多の感情を向けられ続けた者特有の苦悩。
私はそれを経験してこなかったから、真の意味で豹牙さんの苦悩を分かち合うことが出来ない。
でも男子に必要以上に絡まれないように地味な格好をしていたあやなにはそれが出来る。
だからあやなにもキスしたんですか?
だからあやなにも心を許したんですか?