念の為気配を悟られぬよう近づき、建物の陰から様子を覗こうとしたが──
できなかった。
だってその前に見たふたりの影が重なっていたから。
街灯の光の角度の問題じゃない。
明らかに豹牙さんがあやなに顔を寄せている。
そのことに気づいた途端、喉が握り潰されたかのような感覚に陥り呼吸ができなくなった。
っは、っは、と短い息が身体から抜けていく。
それに伴い平方感覚も曖昧になっていく。
視界がボヤけていき、その代わりに心臓の音が脳を叩くように大きく聞こえてくる。
これ以上ここにいてはダメだと全身が警鐘を鳴らしている。
その警告に従うように、ギリギリで耐えている足を動かした。
歩くスピードはどんどん速くなり、コテージに着く頃には全力で走っていた。
半ば転がり込むように玄関に滑り込み、膝をつく。