そのくせ私たちが絶対に言わないような台詞が並んでいる。
例えば裕次郎さんは「君」を普段使いしない。一貫して「お前」と言う。


この現実と妄想がかき混ぜられた文章は、齋藤香菜子の願望のあらわれだった。

齋藤香菜子は裕次郎さんのことが好きだから。

裕次郎さんに彼女がいようと関係ないらしい。

いわゆる夢女子・・・なのだろうか。専門外なので詳しくは分かりませんが。


思考が脱線しそうになったので頬をペちっと叩いて軌道修正した。

とにかく、そんなこともあり随分前から齋藤香菜子の追放命令が出ていたが、あやなが族に馴染む手助けもしていたのでしばらく泳がせていたのだ。

今日私を───ひいては豹牙さんの判断を侮辱したので追放に至ったが。


齋藤香菜子のデータを追放済みのリストに移し、パソコンをシャットダウンしたところでようやく肩の荷がおりた気がした。

早く追い出そう派だった豹牙さんと裕次郎さんに小言を言われなくて済みますし。