それにもかかわらず空気が変わったのは、私の口調があの方を彷彿とさせるから。
右手をパッと挙げると、私の補佐たちが前に出た。
「さようなら、齋藤香菜子。あーいや、天乃結愛と呼んだ方がよかったか?」
『天乃結愛』の名前を出した途端、香菜子は顔色を失った。
「なっ、なんでその名前を・・・!?」
「なんでだろうな。まぁ次に会うときは赤の他人だから気にするな」
右手でグーを作ると、補佐達が香菜子の両腕を拘束した。
「──連れて行け」
私の命令を合図に香菜子は補佐たちに引きずられていった。
「冴妃さん・・・今の、」
「あぁ、豹牙さんの口調を真似しただけです。似てましたか?」
再びあやなに視線を向けると、「ひっ」と小さな悲鳴を上げられた。
香菜子の追放について何か言いたいはずだが、とても私に意見できるような精神状態にないようだ。