「あなたがデマを流したと聞いたんですが、事実ですか?」

「な、何のこと・・・ですか?」

「豹牙さんと私が付き合っているという話です」

「そ、それのどこがデマなんですか・・・!?!」

「全部です」


私がはっきり言い切ると、あやなは胸の前で手を組みながら一歩前に出た。

明らかに取り乱している。



「だっ、だって、わたし昨日見ちゃったんです。豹牙さんと冴妃さんがキスしてるところを・・・!!」



ザワっ、とあやなの発言を中心に、周囲のどよめきが波紋のように広がった。

どうやら昨夜のアレを見られていたらしい。

確かにベランダから海岸が見えるということは、その逆も然りだ。
深淵をのぞく時深淵もまたこちらをのぞいている・・・と同じか。

だが見られたところで私が動じる必要はない。