「・・・ご冗談を」
「そう言えば話が流れると思うなよ」
「・・・・・・」
咄嗟の虚勢も豹牙さんの前ではすぐに剥がれ落ちてしまう。
豹牙さんは本気だ。本気で私が綺麗だと思っている。
そんなの目を見なくたって分かる。
「冴妃」
「・・・はい」
視線を上げると、紫と黒と紺とが入り混じる、幻想的な瞳に囚われた。
同時に、何があろうとこの方には逆らえないと悟った。
身も心も自然と惹かれていく。
どちらからともなく唇が重なったとき、心が痺れたような気がした。
そして再び視線が交わる。
あぁ豹牙さんも私と同じ気持ちなんだと、強制的に実感させられた。
合宿2日目の昼下がり。
いくら休暇とはいえ一日中ダラダラしていたら体が鈍るので、日傘を片手に散歩に出かけた。