今更どうにかしたいとは思わないけど、虚しいものは虚しい。


そんな私を、豹牙さんは「そうか」と静かに受けとめた。



「正直俺も何とも思わないから、お前と同じように感受性終わってるんだろうな」



────え?

思わず顔を上げると、豹牙さんはただ海を眺めていた。私と同じ、興味なさそうな瞳で。



「え、じゃあ何故わざわざベランダに?」

「裕次郎が冴妃に見せたら喜ぶんじゃないかってしつこかったから」

「何ですかそれ、ふふっ」



豹牙さんの言葉にそれ以上の意味なんてなかった。

本当に何となく連れてきただけ。ただの気まぐれだ。

それがおかしくてつい笑みがこぼれた。

その根底には私を喜ばせたいという気持ちもあったはずだが、豹牙さんにとって、自身の気持ちと私がどんな反応をするかは別問題なのだ。

だから私が喜ばなくても不機嫌にならず、ただそれを受け止めている。