「・・・こういうとき、普通は『わぁ綺麗〜』って感動するんでしょうね」
「そうかもな」
豹牙さんに平坦な声で肯定され、胸がズキッと痛んだ。自分から言い出しておいて傷つくなんてお門違いもいいところ。
手すりに寄りかかり、続きを紡ぐ。
「ですが私はそういう感受性、死んじゃってるみたいです」
幼い頃から両親に連れられ色々な場所を巡ってきた。
それを無邪気に楽しんでいた時期もあった・・・んだと思う。もう思い出せないが。
でもいつしか私はどんな絶景を見ても心が動かなくなっていた。
「ああ、前にもこんな景色見たな」という冷めた感想しか抱けない。
だから他の人がイルミネーションや一面に広がる花畑に感動していても、私だけが違う場所に取り残されているように感じる。
これは両親が悪いんじゃなくて私自身の問題だ。
元々希薄だった感受性がすり減って機能しなくなっただけ。